債権回収DXとは?メリットや導入の流れを分かりやすく解説
コラム

企業にとって債権回収は、自社のキャッシュフローを健全に保つための重要な業務です。
しかし、残高管理や電話やメールでの督促などによって、リソースを大幅に割かれているケースがあります。
債権回収を効率化するには、DX(デジタル・トランスフォーメーション)がおすすめです。
この記事では、債権回収DXのメリットや導入の流れを分かりやすく解説します。
現在の債権回収システムを効率化するための方法が分かるので、ぜひ最後までご覧ください。

この記事は20年以上金融サービスを提供してきたソモ㈱が執筆しています。

目次
債権回収のDXとは

債権回収のDXとは、債権回収に必要な「督促」や「支払管理」などの作業をデジタル化することです。
債権回収は、複雑性の高い作業でありながら、これまで手作業への依存度が高い状況でした。手作業での債権回収は膨大な確認作業が発生し、ヒューマンエラーのリスクがあります。
債権回収の非効率性は、企業のリソースを消耗して、経営上のリスクに直結するでしょう。
しかし、債権回収にDXを活用すれば、効率性や正確性などの問題を解決できます。DXにより債権回収の効率を最大化すれば、キャッシュフローの健全化や企業価値の向上に繋がるでしょう。
また、AIによるリスク評価を導入すれば、不良債権の発生を減らすことも可能です。
債権回収の流れ

これまでの債権回収とDX後の債権回収は、回収するまでの流れが異なります。ここでは、それぞれの債権回収の流れを解説します。
これまでの債権回収
従来の債権回収の基本的な流れは、以下の通りです。
- 電話やメールでの督促
- 内容証明郵便の送付
- 裁判所へ申し立て
- 強制執行
基本的な流れは上記の通りですが、実際に債権を回収するには、個別の事案に対して臨機応変に対処する必要があります。
これまでの債権回収は、人間の作業によりおこなわれていて、人的リソースを大きく消費するものです。
また、法律の知識も必要となり、外部の専門家に依頼する場合は、コストも掛かってしまいます。
DXでの債権回収
DXでの債権回収は、多くの部分が自動化され、人間の作業を減らしています。
- 未払いにならないようアプリで顧客が債務を管理
- 未払いになったら自動で電話やメールによる督促
- AIの学習により回収行動を最適化
- 1~3の繰り返しで回収率を上げていく
DXでの債権回収は、人間の作業を減らすだけでなく、AIの学習による効率化が可能です。債務者への連絡の頻度やタイミングを最適化することで、回収率が向上します。
債権回収をDXするメリット

債権回収のDXは、業務効率と正確性を改善して、コスト削減にも役立ちます。
ここでは、債権回収をDXするメリットを解説します。
業務効率と正確性の改善
債権回収をDXすると、業務効率や正確性が改善します。債権管理システムが回収のプロセスを効率化して、正確かつ迅速に作業を進められるためです。
また、債権回収時に必要な消込業務が不要になり、入力ミスも減少します。債権回収の担当者は、業務時間に余裕ができ、より重要な業務に集中できるでしょう。
コスト削減
業務が効率化してミスが減少すると、コスト削減にも役立ちます。
ミスが減ると、修正に伴う人件費を大幅に削減できるためです。督促業務をDXにより効率化した企業は、業務時間の80%削減に成功した例もあります。
リスク管理の強化
債権回収の負担を減らすには、そもそも不良債権を発生させないことが大切です。
AIにより市場動向や債務者の支払い能力を分析して、リスク管理の強化ができます。取引先に対する与信評価のノウハウがない企業であっても、簡単にリスク管理ができるでしょう。
また、バックアップ機能のあるクラウドサービスを利用すれば、データの紛失や漏えいのリスクを低減できます。
顧客満足度の向上
債権回収のDXは、顧客満足度を向上させて、企業価値が向上します。
債権回収にAIチャットボットや音声認識システムを導入できるためです。債務者からの問い合わせに対して24時間対応でき、顧客満足度が向上します。
また、債務者のデータ分析に基づいて効率化された督促や、オンラインでの返済手続きは双方の負担を軽減できるでしょう。
債権回収DXに必要な技術

債権回収のDXでは、AIやRPA・クラウドサービスなどの導入が重要です。
ここでは、債権回収DXに必要な技術について解説します。
AIによるデータ分析
AI(人工知能)は、債権回収において最重要の技術です。
AIにより債権情報の自動処理や詳細な分析をして、債務者の支払い能力や返済意思を予測して、細かくリスク管理ができるためです。
例えば、過去の支払い遅延に関する情報を分析して、将来的に返済遅延を起こしそうな債務者を特定します。事前にリスクを予測することで、早めの対策が可能です。
また、チャットボットや融資稟議書の作成・与信の評価などもAIにより自動化できるでしょう。
RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)
RPAは、人間がパソコンで繰り返し行う単純作業を自動化できる、ソフトウェアロボット技術です。
債権回収において、人間が行っていた以下のような作業を自動化できます。
- データ入力
- 残高の計算
- 報告書の作成
- 入金額の集計 など
RPAが単純作業を代行することで、ヒューマンエラーを防げます。日本は労働人口の減少により、慢性的な人手不足に陥っています。しかし、RPAを活用すれば、全体的な業務効率化に繋がり、人手不足を解消できるでしょう。
クラウドサービス
クラウドサービスを導入すると、債権情報の管理を効率化できます。
例えば、複数の部署や拠点・外出先からクラウドにアクセスできるため、常にリアルタイムで最新の情報を確認できます。意思決定の判断が早くなり、債権を回収できる確率が上がるでしょう。
さらに、クラウドベースのサービスは、最新の暗号化技術やアクセス制御を取り入れていて、データ漏えいのリスクが大幅に減ります。自動データバックアップの機能を備えていれば、データ紛失のリスクも無くなります。
債権回収DXを導入するまでの流れ

債権回収DXの導入は、現状分析と課題を特定することから始まります。ここでは、債権回収DXを導入するまでの流れを解説します。
①現状分析と課題の特定
DXを推進するには、まず債権回収業務を分析して、どこに課題があり改善が必要なのか把握します。
例えば、過大な人的リソースが割かれていたり、自動化や効率化の余地があったりする部分です。
現状分析と課題の特定には、債権回収部門だけでなく経理課やIT部門などとの連携が必要です。
②目指すビジョンと数値目標の設定
現状分析と課題の特定をしたら、自社の債権回収DXの目指すべきビジョンと、具体的な数値目標(KPI)を設定してください。
例えば、5年後の債権回収率を〇%向上させる・督促業務の工程を半減させるなどです。
③技術選定と連携
設定した数値目標を達成するための技術選定をおこないます。
債権回収DXの技術には、AIやRPA・クラウドサービスなど、多くの選択肢があります。
自社の目標を達成するために、どの技術を活用するのが最適か検討してください。現在使用している基幹システムや会計システムとの連携が可能かも確認しましょう。
④業務プロセスの再設計
DXは現在のシステムをデジタル化するだけではありません。従来の業務プロセスを根本から見直して、より効率の良いシステムに変更することが大切です。
例えば、手作業でおこなっていた消込作業や督促業務のフローを、自動化に適した流れに再構築することで、効率性と正確性を向上させます。
業務プロセスの再設計は、組織を大きく変える大変な作業です。しかし、DXには不可欠なので、確実に進めていきましょう。
⑤人材育成
DXをおこなうには技術を導入するだけでなく、従業員のデジタルスキル向上も欠かせません。
従業員がDXの必要性を認識して、新しいツールを積極的に活用するようにトレーニングする必要があります。
特にDXを推進する中心人物には、分析能力やプロセスを効率化する能力・変化に柔軟に対応する能力など幅広いスキルが求められます。
まずは、経営陣が変革を率先して推進して、社内に変化に対応する雰囲気を作ることが重要です。
まとめ
債権回収のDXとは、債権回収に必要な督促や支払管理などの作業をデジタル化することです。
従来の債権回収は、督促の電話やメール・入金の消込作業など、人間の手作業で処理するケースがほとんどでした。
しかし、債権回収をDXすれば、多くの作業をAIが代替したり、自動化で効率化したりできます。
債権回収をDXすると、コストの削減やリスク管理の強化・顧客満足度の向上などのメリットがあります。
現在の債権回収システムに不都合を感じているのであれば、今回紹介したDXをする流れを参考にしてシステム改革をおこなってください。