第3回 「なんとかなる」が一番危ない

~どんぶり勘定が会社を壊す理由~
レイナ先生、前回のお話で、売上があってもお金が足りなくなることは分かりました。でも、毎日口座の残高を確認していれば、大丈夫じゃないですか?
残高を確認するのは大切ですね。ただ、その残高から、これから何の支払いがあるかも把握していますか?
これから仕入れ代や給料を払う予定はあります。でも、全部でいくら出ていくかまでは確認していません。会社の経費を個人カードで払うこともあるけど、明細は後でまとめて確認しています。今のところ、なんとかなっていますし……。
その「今のところ、なんとかなっている」が落とし穴になることもあります。支払いができていても、お金の流れが分からなければ、次も足りるとは限りません。今回は、感覚に頼ったお金の管理から抜け出す方法を考えてみましょう。
口座残高だけでは、会社のお金は分からない
「売上は上がっている」「口座にもお金がある」。そうした理由だけで、会社のお金は大丈夫だと判断していないでしょうか。
どんぶり勘定とは、入金や支払いの内容を十分に確かめず、おおまかな感覚でお金を管理している状態です。
たとえば、口座に100万円あっても、次の入金までに仕入れ代や給料などで合計110万円の支払いがあれば、10万円足りません。今あるお金だけでなく、これから出ていくお金まで確認しなければ、安心できるかどうかは判断できないのです。
資金不足に気づくのは、請求書を確認したときや、給料を振り込もうとしたときかもしれません。口座残高が減り、銀行から借りなければ支払えないと分かって、初めて慌てることも考えられます。
しかし、支払日が迫ってからでは、対応に使える時間が限られます。融資を相談しても、すぐに資金を用意できるとは限りません。
どんぶり勘定の怖さは、資金不足への気づきが遅れ、対策を考える時間まで失ってしまうことです。
個人のお金と会社のお金を曖昧にしない
お金の流れを見えにくくする原因の一つが、個人と会社の支払いが混ざることです。
たとえば、個人カードで会社の備品を購入し、同じカードで私生活の買い物もする。会社への精算を後回しにしていると、明細を見ても、どれが会社の経費なのかすぐには分からなくなります。
また、会社の資金が足りず、社長が個人カードで立て替える場合もあるでしょう。
その場では支払いを済ませられても、カードの引き落としは後日やってきます。会社が社長に返すべき立て替え分も、整理しておく必要があります。
ここで大切なのは、個人カードを使ったことだけで問題だと考えるのではなく、次の点を曖昧にしないことです。
- 何のために使ったお金なのか
- 会社と個人のどちらが負担するものなのか
- 立て替えた分の精算は済んでいるのか
これらが分からないままでは、会社の口座残高を見ても、未精算のお金まで含めた状況は把握できません。
会社用と私生活用の支払いを分け、立て替えた経費は記録して精算する。処理が分からないものは、税理士などに確認する。こうした基本的な整理が、お金の流れをつかむ土台になります。
資金繰り表で「これからの支払い」を見えるようにする
感覚に頼った管理から抜け出すために役立つのが、資金繰り表です。
名前は難しそうですが、基本は、会社のお金が入る予定と出る予定を並べ、いくら残るかを確認する表です。
まずは、直近1か月について、次の内容を書き出してみましょう。
- 今、会社にある預金や現金
- 売上代金などの入金予定日と金額
- 仕入れ代、給料、家賃、借入返済などの支払日と金額
- カードの引き落としや、社長への立て替え精算の予定
確認するときは、月の合計だけでなく、日付の順に見ていくことが大切です。月末にはお金が残る予定でも、入金より先に支払いが集中すると、月の途中で不足することがあるためです。
また、カード利用分は、会社の口座から出る支払いや社長への精算と重複して数えないように整理します。入金日が未確定のものも、確定した予定とは分けておきましょう。
慣れてきたら、翌月、その先へと見通す期間を延ばします。そして、入金や支払いの予定が変わったら、表も更新していきます。
大切なのは、きれいな表を完成させることではありません。「いつ、いくら足りなくなりそうか」に早く気づき、判断に使うことです。
不足が見えたら、予定している支出を見直したり、早めに専門家へ相談したりする。その行動につなげてこそ、資金繰り表が経営に役立ちます。
今日のまとめ
今日のポイント
✓ 口座残高だけで安心せず、これからの入金と支払いまで確認しましょう。
✓ 個人と会社のお金を分け、立て替えや精算を曖昧にしないことが大切です。
✓ 資金繰り表を更新し、不足に早く気づくことで、対応を考える時間を確保できます。
次回予告
次回は、銀行に会社の経営状態を説明するために必要な「決算書の見方」について取り上げます。
数字が並んでいて難しそうに見えますが、経営者として押さえておきたいポイントがあります。決算内容を説明できないことが融資審査や銀行との信頼関係にどう影響するのか、何を理解しておけばよいのかを分かりやすくご紹介します。


